Tくんから学んだこと
TNC理念チーム 小西 雅
こんにちは! TNC理念チームの小西雅です。
私は月に一度、地元の子ども食堂のお手伝いをしています。
最初は、カラオケコーナー前に、場の雰囲気を盛り上げるための楽器演奏をしていましたが、パフォーマーの方のご参加が増えてきたので、最近はもっぱら、受付やご案内係に徹しています。
今日は、数ヶ月前の子ども食堂での体験をシェアさせていただきます。
●発達障害のTくん
子ども食堂のスタッフに、Kさんという女性がいます。主に調理を手伝ってくださっています。
Kさんには、Tくんというお子さんが居て、発達障害があると聞いています(どんな診断が付いているのかは、聞いていないので知りません)。年齢は4、5歳ぐらい。一般の保育園ではなく、障がい児を見てくれる所に通っているそうです。
Tくんは、普段は朗らかで、自分の作った工作や折り紙を見せてくれたりする、社交的な子です。
でも、ここは譲れない!という領域に踏み込まれると、大声を上げたり、暴れたりすることがあるようです。
私はこれまで、朗らかなTくんしか知らなかったのですが‥‥ある日、いつもと違うTくんと向き合うことになりました。
●お金が欲しい
子ども食堂の受付には、募金を入れるガラス瓶が置いてあります。
透明なガラス瓶を使っているのは、「募金してくださる人が、こんなに居るんだよ!」という暗黙のアピールです(笑)。
先日、Tくんが瓶の中のお金を見て、「このお金、欲しい!」と言ってきたのです。
私は、「これは、みんなのお金やねん。このお金で、今日Tくんが食べたごはんの材料とか、みんなに配ってるお菓子を買うんやで」と‥‥しごく当たり前の説明しかできなかったのは、私の力不足ですが‥‥まぁ納得してくれるわけがありません。
「欲しい!欲しい!」と全身で主張を始め、地団駄を踏み、それでもダメだとなると、受付カウンターに置いてあった、輪ゴムの袋(業務用の、デッカイ袋!)から中身を取り出して床にばら撒き、足で踏みつけるパフォーマンスが始まってしまいました。
力づくで止めるのは逆効果だと思ったので、しばらくそのままにしていました。
そのうちTくんも疲れてきて、暴れは落ち着いてきました。
しかし、床には踏みつけられた大量の輪ゴム。
こども食堂を訪れる人が増えてくる時間帯だったこともあり、何事かと立ち止まる人も居ました。
私は少し時間を置いて、床に散らばった輪ゴムを片付け始めました。
●必ず背景がある
Tくんのお母さんが厨房に居ることは判っていましたが、私は親を呼びませんでした。
ただ、この様子を見ていた誰かが、お母さんに一部始終を話したようです。
しばらくして、Tくんがお母さんから注意を受けていた、と、他のスタッフさんから聞きました。
未成年の子どもは、親に保護責任がある、ということになっています。
たしかに、親にしかわからないこと、できないこともあります。
が、すべて親に丸投げ、親以外の大人たちは「我関せず」で良いのでしょうか?
親以外の大人が関わってできることは、何もないのでしょうか?
そのあと、Tくんのお母さん・Kさんと話すことができました。
「なんか暴れたみたいで‥‥すみません」と言うのを聞いて、この人は、どれだけ周りに謝ってきたんだろう、どれだけこんな想いをしてきたんだろう‥‥と、少し辛くなりました。
そして、「いえいえ。Tくん、なんかイヤなことでもあったんかなぁ?」と返しました。
すると、この日の前日、保育園でも問題があって先生から注意を受け、そのあとおばあちゃんの家に行ったら、おばあちゃんがTくんの活動量に付いていけず、もう帰ってと言われた、と言うのです。
障がい児教育を学んでいても、手に負えなかった保育士さん、保育園から報告を受けた母親のKさん、孫の相手をしたいけど、体力が追い付かなかったおばあちゃん‥‥さまざまな背景が見えてきました。
●障がい児だから、ではない
さらにそのあと、Tくんとも話ができたのですが、なんとここで「お金が欲しい事件」との関連がわかったのです。
「いっつもな、おばあちゃんがお小遣いくれるねんけど、昨日行ったら、もう帰って!て言われてん」
これまでもガラス瓶は置いてあったのに、なぜこの日に限って欲しいと言ったのかも、わかってきました。おばあちゃんに「帰って!」と言われ、お小遣いがもらえなかったんやね‥‥。
そこへ、タイミング良くガラス瓶の千円札が目に入ってしまい(笑)、つい欲しくなったんやな、と。
暴れたという結果だけ見てしまうと、面倒だと思われるかもしれませんが、ちゃんと理由があるやんか。
大騒ぎしなくても、良かったかもな〜、と思えてきました。
大人だって、宝くじ売場にある数億円のディスプレイ札束を見て、いいなぁ〜と思うこと‥‥あるでしょう?!(笑)
目立った場面だけを見て、障がいがあるから暴れるんだ、と結論するのは、あまりにも短絡的です。
●印象に残った言葉
障がいは個性だ、だから差別はいけない、個性と向き合うことが大切、と言われていますが、そもそも「向き合う」って何でしょう?
私は、障がいや、いわゆる社会的弱者と呼ばれる人たちと接する際、理解を示しているように見えて、実際はビビッて行動できなかったり、腫れ物に触るように接している人が、まだまだ多いのではないかと感じています。
慣れていないと、どう接したら良いかわからないのは当然です。
経験を重ねれば、動揺は減っていくでしょう。
しかし、それとは別に、なぜビビるのか?
私たちのどこかに、自分に対する評価や責任、周りの目を気にする性質が潜んでいるのでは?と考えます。
Tくんが暴れたあと、同じく発達障がいのあるYくん(高校生ぐらい)が、Tくんの「事件」を聞いて、ひとこと言いました。
「なんやアイツ、またキレたんけ!」
言葉は乱暴です。でも、顔を見ると怒りや困惑の表情ではなく、ヘラヘラ笑っているのです。
私は彼の反応に、ある種の「愛情」を感じました。
Yくんの態度に、Tくんを特別扱いしたり、事を荒立てたくないという気持ちが感じられなかったからです。
「またキレたんけ!」と言いつつ、仲間外れにしたり、非難するようなこともしていません。
特別扱いせず、自分の評価を怖がらず、「素」の状態で関わる‥‥このような接し方が、本当の「向き合う」ではないかと教えてもらった体験でした。
TNCでは、人づくりを大切にした評価制度の研究・実践を行っています。
ご関心のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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