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価格決定権を知財で作った企業の紹介

2021年6月7日(月)
TNC「モノづくりチーム」担当の弁理士の山本英彦(ヤマヒデ)です。

「モノづくりチーム」は、世界に通じるものづくりをテーマに、現場の標準化、特許、商標などをみていき、「いい会社」を構成する3つの要素、「売れる仕組み」「学習する組織」「組織感情」のうち、
「売れる仕組み」を作る整備を中心に活動します。

私は、とくに、特許や商標、いわゆる「知的財産(知財)」を担当します。

積極的に特許を使って価格決定権を持つようになった企業があります。
今日はそんな会社「株式会社ナベル」についてご紹介します。

株式会社ナベル

株式会社ナベルは、現在、従業員180名程度の企業です。

中小企業として少し大きめの中企業ですが、創業者の南部現会長が1975年に創業された際には7人からスタートされました。

50年超の歴史で大きく成長されたことがわかりますが、その成長の裏には特許の活用があります。

この会社の取り扱っている主な製品は「卵の選別包装装置」と呼ばれるものです。

スーパーやコンビニで見かける鶏の卵は、プラスチックなどでできた卵パックに詰められていると思います。この卵パックに、卵をサイズ分けして(選別)詰める(包装)する機械が「卵の選別包装装置」になります。

市場シェア8割と特許の関係

株式会社ナベルは、この卵の選別包装装置の市場シェア8割を占め、国内はほぼ独占しているような状況です。海外においても、市場シェアは2割で、オランダの企業に次いで2位となっています。

株式会社ナベルが市場シェアの8割も確保できるその理由に商品開発力と知財力があります。株式会社ナベルでは、創業のきっかけとなる国内で初めた開発した卵の選別包装装置や卵のヒビ検査装置も世界で初めて開発した実績があり、その他にも、卵に関する独自製品を開発改良しつづけています。 そして、新たに開発される製品のほぼすべてに特許を出願、取得されています。特許出願の件数は、国内出願だけで500件を超え、海外にも出願を行っています。また、製造業としては商標出願も積極的に行っています。

継続的な製品開発でお客様に喜んでもらえる製品を提供し、市場とブランドを構築し、その市場とブランドを特許と商標で参入障壁を形成することにより、8割にも及ぶ市場シェアが確保できるのです。そして、独占状態の市場を形成できれば、価格競争がなくなり、適正な価格で製品を販売することができます。これが、株式会社ナベルは商品の価格決定権をもつための戦略になります。

特許活用の背景

ちなみに、この戦略の陰には、株式会社ナベルが特許裁判で訴えられた経験があります。国内初で卵の選別包装装置を開発し勢いに乗っていた株式会社ナベルに対して、歴史のある競合の海外企業が、勢いを止めるために裁判を仕掛けてきたのです。その裁判で請求された損害賠償の額は当時の株式会社ナベルの年間の売り上げを超えており、南部会長(当時は社長)は「これでナベルは終わりだ」と覚悟を決めざるを得ないほどだったそうです。

結局、その裁判自体は、協力された弁護士、弁理士のおかげもあり、当初請求された損害賠償の1/10程度の和解金で決着し、株式会社ナベルは事業を継続できたわけですが、その際「特許は金になる」という意識を南部会長は持つようになられました。そして、製品開発と特許取得をセットで継続的に行う事業展開により、現在の地位を築くまでになりました。

株式会社ナベルは、訴えられた裁判で特許の威力を知ったことにより、今度は自社が特許を活用する立場となりました。これにより、従業員7名の企業から現在は市場シェアが8割を超え、従業員が180名を超えるまでに成長しました。これは、価格決定権を持てるようになるまで特許を活用してきたことが理由だと感じます。

まだあるナベルの特許活用(次回へ続く)

特許を使って価格決定権を持つようになった株式会社ナベル。「売れる仕組み」が構築されたことで、実は、従業員に対しても、特許関係で面白い施策を行っています。次回は、その施策についてこのブログで紹介したいと思います。

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