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価格決定権を持つための知的財産

2021年2月8日(月)
TNC「モノづくりチーム」担当の弁理士の山本英彦(ヤマヒデ)です。

「モノづくりチーム」は、世界に通じるものづくりをテーマに、現場の標準化、特許、商標などをみていき、「いい会社」を構成する3つの要素、「売れる仕組み」「学習する組織」「組織感情」のうち、
「売れる仕組み」を作る整備を中心に活動します。

私は、とくに、特許や商標、いわゆる「知的財産(知財)」を担当します。

売れる仕組み

売れる仕組みといっても、売れればよいということで商品やサービスを適正な価格以上に安くするというのは、売れる仕組みとはいいません。価格を下げることは仕組みではありませんよね。

ですので、ここでは少し言い換えをして、利益のでる仕組みと考えます。

利益をだすには、価格を上げて、経費を下げれば良いです。
しかし、経費の大部分を人件費が占める場合が多いと思いますので、先の「組織感情」などを考えると、適正な給与以下にしてはいい会社になれません。

したがって、できれば価格を上げたいところです。
すなわち、高くても買ってくれる仕組みができれば良いわけです。もちろん、むやみやたらに価格を上げて商品を売るというわけではなく、経費を差し引いて適正な利益のでる価格での販売ということです。

そして、価格を上げること→価格決定権を持つことになります。
価格決定権を持つこと、利益の出る仕組みであり、売れる仕組みになります。

どうすれば価格決定権を持つことができるのか?

知財で価格決定権を持った事例

私の前職になるのですが、株式会社ナベルという会社があります。
鶏卵をパックに詰める機械を製造する会社です。
この会社は、国内の市場シェア8割という、いわゆるニッチトップ企業です。ニッチな分野ですが、売上は数十億円あります。
この会社は、このニッチトップの地位を、特許をうまく使って実現しました。

具体的には、高性能の新商品を次々と開発し、新商品を出すごとに特許を取得しました。特許で類似商品が出てこないようにしたのです。特許の出願数は500件を超えます。
類似商品がないと、価格競争は起きません。そうすることで、ナベルの適正と考える価格で取引が成立します。
価格競争が起こらないようにすることが、価格決定権を持つ知財の使い方の代表例だと思います。

しかし、価格決定権をもつ仕組み作りは、特許だけが手段ではありません。

別の例として、書籍「日本で一番大切にしたい会社4」に、東海バネ工業株式会社という企業が紹介されています。
超多品種、超少量生産でバネを製造してる会社です。スカイツリーに使われるバネも製造されている凄い会社です。

この会社の場合、超多品種、超少量生産のバネを、他社では持てないプロフェショナルの技術を用いて製造することで、自社でしか作れない商品を提供しています。
このプロフェッショナルの技術は、いわゆるノウハウといわれるもので、不正競争防止法等でまもられる知的財産になります。

東海バネ工業の場合、他の企業とはレベルの違うノウハウをもった職人を育成し、他者と比較されない状況をつくられています。
比較対象がないので、価格競争にならず、「ここの職人さんにしか作れないからここにお願いしよう。」とお客様か依頼がきます。すると、東海バネ工業の適正と考える価格で取引が成立します。
ちなみに、東海バネ工業は特許を10件ほどしか出願していません。特許がなくても職人技術は他社で真似できないので、特許は必要ないビジネスモデルになっています。

価格決定権を持つための手段としての知財

しかし、職人さんを育てるには長い年月がかかります。
特許を取った方が良いかどうかの判断は、自社の商品や技術が、簡単に真似される可能性があるかどうかで判断すればよいと思います。
よそに真似できない技術を持つ職人さんの技術というのは、特許に勝るとも劣らない知的財産です。

このように、価格決定権をもつために、特許やノウハウのような知的財産は非常に有効な手段となります。

今回紹介した企業以外にも、知的財産を使い、自社の独自性を構築して価格決定権をもつようになった「いい会社」は、非常にたくさんあります。今後もこのブログでは、価格決定権をもつための知的財産について、ご紹介していきたいと思います。

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