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戦国武将と「人財」

日本の歴史、特に戦国武将から現代に活かせることを学ぶ。
こんなことを日々考えている、TNCメンバーの新井です。

最近は、組織を支える有能で大切な人を「人材」ではなく「人財」と表記する機会が増えてきました。当て字やゲン担ぎが好きだった戦国武将も、当時この「人財」という言葉があれば多用していたのではないかと思います。

「人財」という言葉からはより大切にしたいという印象を受けますが、字を変えるだけで良い方向に転がるわけではありません。トップの想いを明確にし、組織内に共有したうえで風土や体制を整える。そして、正しい教育や評価が継続的に行われるという信頼感があってはじめて「人財」という言葉が活きてくるのではないかと思います。

今回ご紹介するのは、城づくりの名人といわれた加藤清正の採用に関する逸話です。
豊臣秀吉の部下として長く仕え、数々の勲功を重ねた清正。
そんな彼の名声は全国に轟き、「加藤家で働きたい」という就職希望者が跡を絶たなかったそうです。ある時、加藤家に3人の士官希望者(=求職者)が来ました。

一人目は、老人。
一度引退したが、自らの経験を話すことで加藤家の役に立つのではないかと思い士官。

二人目は、中年。
他家を渡り歩き経験豊富、平和な世になったがまだまだ武功を上げたいと思い士官。

三人目は、若者。
自らの能力を発揮できる場として、高名な清正率いる加藤家に就職したいと思い士官。

この三人を清正の重臣、今で言う役員クラスが面接し、清正のもとへ報告に行きました。
重臣たちの意見は一致し、
「老人は労働力とはならない、中年は移り気で和を乱す可能性が高いので不採用。若者は
礼儀正しく才能がありそうなので採用。」というような結論に至りました。

これに対する清正の決断は真逆で、「老人と中年は採用、若者は不採用。」清正曰く、
・老人は、自ら売り込むほどその経験に自身があり、よろず相談の担当として適任だろう
・中年は、新しい風を呼び今停滞している家中の雰囲気を変えてくれるだろう

そして、なぜ若者が不採用なのかを重臣たちから問われた清正の回答がこちら。

その後、老人は確かな経験と知識で相談窓口として活躍、中年はその功名心からくる積極的な行動と他家を渡り歩いた経験で家中を活性化させました。
さらに、清正が若者を採用しなかった理由を加藤家にいる若者たちが聞き感激、発奮している様を見て、重臣たちは「さすが清正様だ!」と感心したそうな。

めでたしめでたし、と締めたいところですが、もう少し細かく見てみましょう。
まずは、清正は直接面接もせずに士官者たちの人となりがわかったのかという点。もう一つは、三人とも優秀ならば全員採用でも良かったのではないかという点。

いくら清正といえども、会いもせずに人となりを判断することは難しいでしょう。
恐らく、清正は就職希望者たちの面接会場までの行動や所作、面接をこっそりチェックしていたのではないでしょうか。あるいは、清正であることを隠してこっそりと会話をして人柄を見ていたというのも考えられます。
このように接してみたうえで、恐らく清正から見て若者に何かが欠けていると判断した、もしくは、加藤家の風土にあわないと判断したのかもしれません。

優秀な「人財」を採用したところで、受け入れる組織側の体制や風土が整っていないと、その後すぐに出奔(=退職)してしまう危険性があるのは今も昔も変わらず。
この逸話からは、単に採用する範囲を広げようというだけではなく、ほかにも
・どのような「人財」を欲しているのか、トップと重臣で共有できていたのか
・組織内の「人財」である若者たちに十分な教育ができていたのか
など考えさせられる点がたくさんありますね。このお話が、いい組織づくりの一助になれば幸いです。

「いい武将」研究会 新井良典

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