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川嶋先生と考えるアフターコロナの「働き方」(第一回) 

今回は、川嶋英明先生(社会保険労務士)に聞いてみました。

牧野:
今回、「いい会社」コンサルティングチーム(略 TNC)に参加していただき、ありがとうございます。
これまでに、いくつかの書籍を出版されている中で、『「働き方改革法」の実務』は多くの経営者に紹介させて頂きました。
この中でも、丁寧に解説されていましたが、その後に起こりましたコロナウィルスによる社会経済の大混乱を経て、今後はアフターコロナともウィズコロナとも言われる中での「働き方」の変化には、経営者として、どのように接していけばよいかをお尋ねしたい。

川嶋:
こちらこそTNCのメンバーとして参加できることをとても光栄に思っています。また、拙著に関しても、いつも紹介してもらい本当にありがとうございます。
早速、ご質問にお答えすると、正直「働き方改革」で働き方が変わった、というところは、特に中小企業では少なかったのではと思っています。

牧野:
そういう状況ですね、どうしてなのですか?

川嶋:
もともと労働法に関しては、それを取り締まる監督署の人員が足りておらず、そもそも全事業場に対して行えるような体制になっていないことが大きいと思います。
イメージとしては交通法規の取り締まりのようなもので、全ドライバーの交通違反を警察が取り締まれるようになってないのと同じ状態です。

牧野:
それでは、たまたま見つかってしまった感じの印象を経営者がもってしまいますが。

川嶋:
ただ、監督署の調査って労働者から監督署に相談があってそれで入られる、ということも多いんですね。
なので、労働者が監督署に駆け込むくらい不満を持ってる会社の場合、監督署が入らないということはまずないので、遵法意識が低い会社や労務管理がきちんとできてない会社ほど監督署に入られやすいとは言えると思います。
その一方で、法違反はあるけれど、労働者が監督署に駆け込むくらいの不満を持っていないような会社に関しては、おっしゃるとおり、監督署の調査が入るかどうかははっきり言って運次第です。
こうした取り締まる側の事情があるので、働き方改革によって導入された「時間外労働の上限規制」や「年5日の有給取得」なども、そもそも対応してないから働き方が変わってない、というところも少なくないと思いますし、対応してなくて、それで痛い目に遭った会社というのもそんなに多くないと思います。
一応言っておきますが、だからといって法律を守らなくてもいい、という意味ではありません。

牧野:
はい、順法の精神で取り組まないといけないところですね。

川嶋:
あと「働き方改革」って凄くインパクトの強い言葉なので、みんなちょっと構えてしまっているかもしれませんが、働き方改革のロードマップや関連する法律の条文で書かれていることって、結局、過去の労働政策の延長線上にあるものなんですね。

牧野:
確かに、その延長線上で考えることが重要だということですね。

川嶋:
その通りです。例えば、同一労働同一賃金も、言ってしまえば以前から政府が取り組んでいた「正規と非正規の格差是正」を言い換え、そこに法律上の決め事などをプラスアルファしているに過ぎません。そういった意味でも働き方改革だけで働き方が大きく変わるというものではなかったと思います。
一方で、今回のコロナ禍は働き方改革でテーマには挙げられていたものの、会社側がなかなか取り組もうとしなかったテレワークを一気に普及させました。
副業・兼業も同様で、Uber EATSのような働き方により副業・兼業に対する注目度が一気に上がったように、働き方改革以上に働き方を変えたのが今回のコロナ禍だったといえます。

牧野:
確かに、そうですね。
環境がコロナウィルスで激変し、急に差し迫ってきた課題に対し、もともとの改善点をどんどん変えていった感じですね。押し寄せてきている感じ、です。

川嶋:
このように働き方の変化といっても様々あるのですが、大きく分けると法律による強制的な働き方の変化と社会的な要請による働き方の変化があると思っています。
ここでいう社会的な要請は、コロナやブラック企業批判の他、政府による指針やガイドラインなど、法律によるもの以外全てを含みたいと思います。
実は働き方改革の全貌が見えてきたとき、わたしはそれらの一つ一つの項目が法律による強制的なものなのか、社会的な要請によるものなのか、普通の経営者の方だと、両者を切り分けるのは非常に難しいのではと思いました。そのため、拙著『「働き方改革法」の実務』では、働き方改革で言われていることのどこまでが法律で決められていることなのか、どこまでがそうでないのかを切り分けて明確にしようと試みました。

牧野:
なるほど。確かに書籍にも法律の「境界」というのがわかりやすく書かれていました。

川嶋:
そう言ってもらえると著者冥利に尽きます。
それで、前者の法律による強制的な働き方の変化については、法律を守ること以外に基本的にすることはないわけですが、後者に関しては、単純に対応するかしないかから始まり、どの程度まで対応するか、といったところまで会社の裁量となるため、非常に会社の色が出る部分となります。

牧野:
後者である「社会的な要請による働き方の変化」は「いい会社」経営へ影響があるようです。

川嶋:
ただ、社会的な要請全てに応えるのは現実的ではないですし、全てやったとしても「いい会社」になるとは限りません。
そのため、会社にとって何をすることが最良で、それをどこまですべきかを決定することは「いい会社」経営において非常に重要なことだと思います。
その一方で、社会的な要請による働き方の変化ついては、会社としてどういった対応するかは別にして、そのことを知らないと対応のしようもないですし、仮に何らかの形で法制化されたときに上手く対応できなかったり、対応が遅れたりする可能性もあります。
なので、働き方の変化に関しては常にアンテナを張って、そうした変化の兆しがあることをまずは知っておくことが重要なのではないかと思います。

牧野:
アンテナを張って変化の兆しに敏感になってみることを教えて頂いた中で、アフターコロナでは、「働き方が変わる」とされ、DX(デジタルトランスフォーマー)時代として、テレワークの推進がされる中でも、とかく中小企業の普及が低く、扱い方にも慣れていないという点も浮き彫りにされました。
そのため、テレワーク導入7割も目標と掲げられていますが、現業職では現場への出勤が減らせないという悲鳴が聞こえてきています。それらについて、どのように思われますか?

川嶋:
厚生労働省が出している「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」では、労働者のテレワークのメリットについて「オフィスでの勤務に比べて、働く時間や場所を柔軟に活用することが可能であり、通勤時間の短縮及びこれに伴う心身の負担の軽減、仕事に集中できる環境での業務の実施による業務効率化につながり、それに伴う時間外労働の削減、育児や介護と仕事の両立の一助となる等、労働者にとって仕事と生活の調和を図ることが可能となる」といった点を挙げています。

牧野:
そうなんですね。テレワークの理想が描かれているのを知りました。

川嶋:
しかし、今回のコロナ禍で実際にテレワークをやってみると、確かに通勤時間はなくなったけれど、仕事に集中できるかと言えば、家には誘惑される要素が多くて集中できないし、育児や介護しながら仕事なんて無理だし、時間外労働は減るどころか増える、といったことを経験した労働者も少なくなく、結果、労働者の方からテレワークではなく普通に出勤して働きたいという人も出てきています。

牧野:
日本での住居環境も大きく関わっているようにも思います。

川嶋:
そうですね。日本の住居環境だと、どうしても仕事部屋を作ることが難しく誘惑だらけの自室や、家族がいるリビングなどで仕事をせざるを得ない人も多いので、テレワークの効率が下がるというのはあると思います。
ただ、テレワークをやめたい人がいる一方で、コロナ禍が終わってもテレワークでずっと働きたいという人もいるようなので、テレワークに関しては少なくとも誰にとっても良いものでもなければ、誰にとっても悪いものでもないのだろうなと思います。
また、個々の労働者の向き不向きとは別に、テレワークには、向いている職種とそうでない職種があることも明らかになってきました。そして、向いてない職種で無理にテレワークをしてしまうと、仕事が回らなくなったり、最悪仕事がなくなったりします。そうしたリスクを負ってまでテレワークってしないといけないものなのかといえば、絶対にそうではないと思います。

牧野:
向いていない職種もあるということに対するフォローや正しい理解も必要と思います。

川嶋:
そうですね。なので、テレワークに関しては最初から無理だと諦めるのは論外にしても、やれるだけのことをやった後なのであれば、やれる会社、やりたい会社、やっても生産性が落ちない会社の中のやりたい人がやればいいのかな、と個人的には思っています。
あと、個人的に疑問であり、無責任だと思っているのがテレワークによる出社者7割削減という目標が達成できたとして、今の経済を維持できるのかということが明確にされていない点です。

牧野:
う~む、それら民間企業へ向けて実施するならば、まず公務員の働き方をどうするか、更に公務員数の適正人数、適正配置も、テレワークの可能なものであれば、業務そのものが無くなったら、削減したり、配置変更したりする出社を抑制する努力は、あまり聞かないものです。そんな中、経済的に苦境に陥る民間セクターがあるのを理解してもらいたい。

川嶋:
一口に公務員といっても、その働き方は多岐にわたるため、全てをテレワークにするのは難しいというのは理解できます。ただ、それは民間だって同じで、結局、自分以外の誰かがやればいい、という行政の身勝手な考えが透けて見えます。
加えて、わたしが違和感を覚えるのが、今回のコロナ禍では、世の中に「金より命」という論法がまかり通ってる点です。

牧野:
そうですね。経済の専門家もコロナ対策の部会、委員会には参加しているというものの、経済活動については、強く言えない雰囲気が漂っています。

川嶋:
身も蓋もない言い方ですが、「金より命」という考えは本当にお金がないという状態を経験したことがない人たちの錯覚で、実際は「金がないと命は救えない」というのが正しいと思っています。ワクチンだってタダ(予算無し)ではないですし、毎日の生活だってお金がないと成り立ちません。テレビに出ている医師だって無報酬で医療を提供することはないでしょう。
なにより、経済の停滞のしわ寄せを最初に食らうのは、大抵は社会的に弱い立場にいる人たちです。
実際、コロナ禍による経済の停滞によって自殺者も増えているのに、それは大きなニュースにはならない。こうした現実を見て見ぬふりをしながら自粛やテレワークの強要を行う政府やメディア、医師会に対し、わたしは強い憤りを感じています。

(第二回に続きます)

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