BLOG

TNCメンバーの活動や考え方をまとめています。

  1. HOME
  2. ブログ
  3. ブログ
  4. それ、本当にメンタルのせいですか?

それ、本当にメンタルのせいですか?

TNC理念チーム  小西 雅

皆さま、こんにちは! TNC・理念チームの小西と申します。

私は海外のインディーズ音楽が好きで、ずいぶん昔ですが、大阪市内で場所を借りて、イベントを行っていました。

マーケットもターゲットも極めて小さいので、単独開催は無理です。
自分と似た、ニッチな趣味を持つ人たちとの共同開催でした。
1組あたりの集客が少ないので、出演者を多くして、それぞれのファンを動員してもらう、というスタイルを採っていました。

決めつけるわけではないのですが、仲良くしていた表現者には繊細な人が多く、急に体調が悪くなったり、連絡しても返事がない、ミーティングに来ない、などのトラブルが少なくありませんでした。

何度かイベントを開催するうち、毎回出演してくれているAくんが、事前ミーティングを無断欠席するようになりました。

確かに彼は、気分のアップダウンが激しいところがありました。
突然高価な機材を購入して、舞い上がった報告があったかと思うと、翌週には落ち込んで電話に出ない、イベント出演の確認すらできない‥‥ということがありました。

そうした状況に我慢ができなくなったのか、共同主催者のBちゃんとCちゃんが、ついにキレました。
「Aくんって、本番には来るけど、ミーティングに来たことないやん」
「メンタルが不安定やから、信用できひん」

なるほど、そうかもしれません。
ただ‥‥私はその言葉に引っ掛かるところがありました。

なぜなら、私も忘れ物を取りに帰って、本番の会場入りに遅れたことがあったから。
ミーティングの当日、体調が悪くて、「今日じゃなかったら良かったのに」と思ったこともありました。

無断欠席は、困ります。
来るか来ないかわからないのは、関係者に迷惑をかけます。

でもそれって、本当にメンタルのせいですか?

誰だって、突然体調が悪くなるかもしれません。
移動中、事故に遭うかもしれません。

何が原因かではなく、連絡が取れず、周囲が判断できなくて困るのです。

主催者側の認識も甘かったと気づきました。
当日、時間になっても現れない、連絡がつかないとなると、スタッフが動揺します。
イベントの運営と、現れない演者さんへの心配が、同時進行になるからです。

状況がわからない出演者さんについては、連絡がつくまでどうしようもありません。
ただ、運営上の判断については、対策すれば、負担が軽減できると考えました。

そこで後日、考えたことを提案しました。
今後はルールを決めて、出演する人には事前に同意してもらいましょう、と。

・事前ミーティングを欠席した場合、決定内容には同意したものとみなします。
 出席できず、意見がある場合は、欠席の連絡時に申し出てください。
・イベント当日、リハーサルに間に合わない場合は、すぐに主催者に連絡してください。
・リハーサル開始時刻までに到着せず、予定通りにリハが進んでいる場合、順番を飛ばして次の演者がリハを行います。
・リハーサル終了までに到着せず、連絡も取れない場合、会場入口に「出演中止」の貼紙を出し、当日の出演は不可とします。
‥‥などなど。

それでも、遅刻やドタキャンの対応は、簡単ではありません。
ただ、「○○さん来ないわ~、何時まで待つ?」といった無駄な迷いは解消されました。

10年以上経って思うのは、あのとき問題提起してもらえて良かった、ということです。
Aくんのおかげで、トラブルをメンタル不調のせいにするのは焦点がズレていると気付かされました。

急な体調不良やアクシデントは、誰にでも起こり得ることです。
予測不可能な事態に対策しておけば、当事者だけに責任を押し付けることなく、関係者の負担軽減が可能であると学びました。

これはイベントだけでなく、あらゆるグループ活動、組織運営に応用できるものと考えます。

現在私は、精神障がい者が主催するボランティア活動に参加しています。
毎月1回、イベント開催と運営会議がありますが、ほぼ毎回、誰かが体調不良で欠席したり、連絡が取れなかったりします。
また、眠剤を服用している人が居るので、就寝時刻が近くなると、ZOOMやSNSは進行できなくなります。

しかしこちらも、問題はメンタル不調や眠剤ではないと私は思っています。
・誰かが参加できないとき、代わりに判断や対応できる人が居ない
・情報が共有できていない 
という状況が放置されている点が、検討されるべきなのです。

逆に言うと、問題を個人の不調のせいにするのは、不測の事態に対応するしくみができていない体制を露呈していると、私は考えます。
運営体制の不備だと考えるより、個人の不調を原因にした方が責任がなくてラクだからです。

夜のミーティングに、残業で参加できないのは仕方ないけど、眠剤でうまく話せないのは困る‥‥って、フェアじゃないと思いませんか? どちらも欠席という点では同じです。

本当にメンタルのせい?
LGBTや人種のせい?

多様性への意識が高まり、ジェンダーフリー、障がい者への理解が広まっています。
しかし、問題が起こった途端、社会的弱者であることを理由に非難されるケースが、まだまだあるのではないでしょうか。

多様性には賛同する、でも、対応についてはよく知らない‥‥という人が多いのではないかと思います。
嘆く必要も、何もわからないと焦る必要もありません。
なぜなら、今は黎明期だから。
種を撒きつつ、土壌を豊かに育てる時期です。
そう考えると、これからの変化が楽しみです。

マイノリティへの理解、協働は、素晴らしいことだと思います。
ただ、マニュアルやルールが存在する世界ではありません。
画一的なルールがないからこそ、多様な社会活動が生まれるのです。
それぞれの活動の中で、対応を模索していくことが、新たな社会を築く基盤になると考えます。

今回のエピソードは、やや極端な事例かもしれませんが、参考になれば幸いです。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事