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働き方と幸福感

TNC理念チーム  小西 雅

●老舗と日本

こんにちは! TNC理念チームの小西雅です。

日本は、世界一老舗が多い国として有名です。
2020年に日経BPコンサルティングが調査した結果によると、創業100年以上の企業数で、日本はダントツの1位で、33,000社を超えています。2位のアメリカは、2万社弱(←建国が18世紀後半であることを鑑みると、逆に2位ってスゴいですが)、大きく差をつけています。

さらに、創業200年を超える企業では、こちらも日本がダントツ1位で1,340社。
2位のアメリカは239社です。

企業の創業年ランキングにおいても、1位~5位が日本です。
建設業の金剛組が世界最古の企業だというのは有名な話ですが、その創業はなんと飛鳥時代、578年です。

日本に長寿企業が多いのは、日本特有の風習や文化も関係していると考えられますが、それはあくまでも、これまでの話。
近年の様々な価値観のグローバル化、労働市場の変化によって、企業が長く存続していくためのノウハウや、組織づくりに、柔軟性・多様性が求められているのではないかと思います。

●伝統産業の昨今

老舗と言えば、呉服関係もその一つです。
最近、ある呉服関係の経営者さんと話す機会があり、面白い話を聞きました。

呉服業界では「年度初めには、クレームや返品が増える」という傾向があるそうです。
これには、「風が吹くと、桶屋が儲かる」みたいなロジックがあります。

昔と違って、現代人はほとんど着物や反物に触れる機会がありません。
なので、呉服のメーカー、問屋、小売店などで新入社員が最初に与えられる仕事は、反物の検品だそうです。

反物反物を素早く、キレイに巻くのは基本なので、反物の取り扱いを習得してもらうため。
巻きながら、品物に難(=なん:生産工程中に生じた不良箇所。補正して、市場に戻す)を見つける、基礎的な眼力を養うためです。

新人さんたちは、懸命に反物を巻き、難を見つけようと頑張るのですが‥‥
いかんせん、まだ十分な経験も知識もありません。
難ではない箇所に、難のマークをして返品する、という事態が多発するそうなのです。

品質に問題がない商品が返品され、不用意な手間や、コストがかかるわけです。
しかし、業界では新人育成のための春の風物詩として容認されているようで、「今年も新しい人が入ってきたんやなぁ~、と思うんです」と、微笑ましく捉えている印象すらありました。

●市場のニーズと労働資源

ところが、
この風物詩が近年、年度初めに限らなくなってきた、とのこと。
原因は主に、
1.高齢化(後継者不足)
2.知識力の低下
3.物流・労働資源の変化

にある、とのことでした。

織物工場
近年、着物ブームの流れもありますが、昔に比べると和装人口は減っています。
卒業式、成人式など、必要な時だけ着用されるようになり、レンタルが増えています。

品質が良くても高いと売れないので、安価な量産品の支持率が上がっています。
材料だけでなく、製糸や生地織りなどの生産工程は、海外への外注が増えているそうです。

●知識とやりがい

謂れのないクレームと並行して呉服業界で増えているのが、責任回避のトラブルだそうです。
クレームに対して、メーカーが「これは難ではなく、こういった風合いの品物なんです」と説明しても、「お客さんに、直すと説明してしまったから」と、強引に補正を迫る業者があるとか。

メーカーにすれば、とても迷惑な話です。
そもそも、販売するアンタに商品知識がないのがアカンやろ、これは難じゃないんですよ、このような品物なんです、と説明できんのかい! と‥‥言いたいはずですよね。

加えて、大規模な展示会などの販売員は派遣が多く、イベントが終了すれば契約は終わり。
誰が、どのお客に売ったか、どんな売り方をしたのかわかりません。
派遣の販売員にはノルマが課せられていることもあり、無茶な売り方をして、トラブルや返品になることもあるそうです。

ノルマを達成して、高い報酬が得られるのは、嬉しいことでしょう。
しかし、達成するプロセスは気にならないの?
それで本当に、達成感はあるの? というのが、私が気になるところ。

「そこに、愛はあるんか?」というCMがありますが(笑)、仕事にも、商品にも、お客さんにも、愛が感じられません。もっと言うと、自分への愛も。

商品の良さをわかってもらえて、お客さんが気に入ってくれて、買ってくれた!
自分も嬉しいし、お客さんも満足してくれる、っていうのが、営業や販売の醍醐味だと思うのですが‥‥。
そのために、商品に関する勉強をしたり、お客さんの好みを知りたいと思うんちゃうの? と。

●他己評価と幸福感

ノルマのために、無理な売り方をしたり、正しくない情報を伝えている人がいたなら(というか、実際はそういう人、割に多いと思うのですが)、毎日の仕事は辛いだろうと思います。

売上成績の良い社員は、優秀だとして、会社から高く評価されるでしょう。
会社からの評価は「他己評価」、つまり、他者が決めた、その人の評価です。

会社として売上が重要なのは、わかります。
営業職にたくさん売って欲しいのも、当然でしょう。
が、ノルマを課して売上を伸ばすって、ちょっと乱暴じゃないですか?

社員を育てる立場にある会社が、なぜ、自社商品の良さや、使ってもらった時の消費者の満足度、幸福感を、会社の資産である社員と共有しないのでしょうか。

私自身、これまで何度か転職をしていますし、定職に就かず、その時代特有の「オイシイ」仕事を転々とした時期もあります。
決して要領が良いタイプではないし、上から高評価されたことは少ないと思います。

しかし、たとえ他己評価が低くても、それなりに仕事への愛着や情熱を持てたのは、自分自身の内的な変化を認識してきたからだと思っています。
誰にも見られていなくても、誰も気づかないほど小さいことでも、わからなかったことがわかった瞬間、できなかったことができた時は、本当に嬉しいものです。
これは、他己評価とは関係ありません。

ひとすじの光小さな変化や成長に気づいてあげられたら、従業員のモチベーションは確実に上がるでしょう。
ただし、当事者の主観的・感覚的な体験に基づくことが多く、記録や報告がなければ他者に伝わりません。
何より、一朝一夕に業績に反映されないため、見過ごされることが多いでしょう。
自ら伸びていく力を持った人材を育てたい、という、経営陣の決意と覚悟が必要です。
時間も手間もかかりますが、会社や商品の価値を実感し、共有できれば、会社にも社員にも喜びとなり、資産になるはずです。
生活のために我慢して働くのではなく、「働いて幸せになる」構図の一助となるはずです。

TNCでは、人づくりを大切にした評価制度の研究・実践を行っています。
ご関心のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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