近森先生の考える「いい病院」とは、「ふつうの病気をふつうに治療し、家に帰す病院」というご解答をいただき、当然のこととは思いますが、理念に基づいて病院経営がなされ、経営の仕組みづくりがなされていることが理解できました。

しかし、実際のところ、近森病院様のように、当たり前と思われる「理念に基づく経営」が行われている病院が少なく感じます。近森先生のお話の中で「自分の病院は何をする病院なのか」を理解せずに経営をしていることが、そもそも間違いであり、それを理解した上で、データ管理を行い、無駄をなくし合理化を図りながら経営していくことが重要であると学びました。

①患者の対応として

・ER に運ばれた患者をリスクに分けて対応していくことで、効率化が図ら、より迅速な対応が可能になっている仕組みについて、見学も含め、理解できました。また、救急車が入ってきたら、医師は手術をし、その後の入院手続き等はER で行わず、次へ回し、どんどん救急患者を受け入れられる体制を整えているため、救命救急では断らない。(一度断ると、患者が入ってこなくなる危険がある。)ことが徹底されており、地域に根ざした医療を行う上でも、経営面においても、医療供給体制が整っていることが理解できました。

・院内見学の際に、紹介、再診と一般外来が区別されているところを実際に見せていただき、検査機器の配置も含め効率化が図られていることは、働く医師、スタッフが無駄なく
「走りながら考える」ことのできる動線を考慮しただけではなく、患者にも配慮した分かりやすい仕組みだということがよくわかりました。

 

②病院の仕組みとして

・業務設計により、ルーチン化を図り標準化し、人材をたくさん投与するような仕組みづくりがなされており(コメディカルへの権限移譲による活用による分業の仕組み)、どのようなサービスをどれだけ提供するかによって人手を決めて入れているとのことで、効率化、分業化による無駄の排除が徹底されていることが理解できました。

近森病院様→命を救う、治す→家に帰す:回復期リハとてもシンプル

・時間外は増やさず(効率悪く、やめていく医師やスタッフも出てくる為)、医師に関しては、医師の確保として、研修医10 名程度/年で、その半分はそのまま残っている状況。または、一度外へ修業に出て、また戻ってくる流れができており、医師の確保は保たれているだけではなく、他の医療スタッフについても不足している状況はなく、常に、働くスタッフが不足し、働く環境の悪化を招かないような調整が図られていること(グラフ管理で一目瞭然)が理解できました。

・近森先生の事業の視点は、「いい医療を提供する」のではなく、「地域に元気な人が増えること」→どれだけ高い質を求めるかは個人的な努力にかかっており、限りがあり、不安定。その人でなければ…とか、その人がいなくなったら終わってしまう仕組みは継続性がなく、目指す視点も重要であることが理解できました。

 

③経営

・患者数の規模に応じて、入り口と出口を一緒にしており、規模拡大によって、入院患者数を算定し、移動の患者数を考慮し、規模を同じにしていくことを計画的に行うことで、よりよい経営が図られていることも知ることができました。(例えば、回復期リハは、2~3ヶ月入院であり、毎月50人が急性期から回復期に移動する。その規模を合わせている。)

・病院経営をよくしていくには、まず、自分ができていないことを理解することが必要との、近森先生のお話がありました(例えば、入院すると体力・栄養低下があるため、管理栄養士が栄養について管理・指導しながら体力の維持回復を図り、しっかりリハビリができるように整えていく。そのような仕組みができているか。)が、実際に病院経営が上手くいっていない病院経営者がそれを自覚すること、あるいは、それに気づいていただくことが理想とは言え困難を極めることだと感じました。しかし、私たちの活動が、少しでも医療従事者の労働環境の改善のお役にたち、その働くスタッフや患者、その家族の幸せにつながればと考えます。大きな気づき、ヒントをいただきました。