私にとって病院とは、サービス業というよりも診断・投薬・薬販売業といった見方でした。現実として、多くの病院がそうなっていると思います。近森院長のお話を伺う中で、用語が分からないものもありましたが、私はその部分は目をつぶってそもそもの院長先生のお考えをくみ取ることに集中しました。

数か月前に某大学医療センターの病院に数回通ったことがあり、建物も設備も古い老舗病院が経営を継続するために行っている大量診察大量投薬は“当然の行い”という印象を持っていました。診察は簡易で次回の予約は1か月後。唯一効率的に回っているのは、無人式機械会計系システム(ベンダー)だけでこれまで会計にかかっていた3、4分が15秒に短縮しただけで根本の解決が行われていない状況が客視線で見えてきました。

その状況が頭に焼き付いている私には、最初に集合した管理棟2階の雰囲気はまったく別なものでした。整然と並べられたモニターにミーティングテーブルというIT企業的なオフィス空間は、効率性を視覚的に感じられる良い例だと思いますし、2Fに集合させる意図も感じられました。その後視察させて頂きました病院内の印象は、『新しい』、『人が多い』、『モニターがデカい』です。特に視察中は人の多さに不安を感じるほどでした。『ER救急救命室』の舞台を思い起こさせました。(院長先生のお話を伺ってその不安は消えました。)

今回特に印象に残っている点は3点です。

一つは、『対応業務の絞り込み』です。

人を救う業務を行っている病院が、目の前のいかなる患者も助ける的な対応をしがちですが、総合病院としての生き残りとして『対応業務の絞り込み』を行う事は大変な事だったと思います。旅館ホテル業界でも生き残りとして顧客ターゲットの絞り込みと対応業務の絞り込みは、必須となりますが実際はできていないところが多いです。目の前のお客様の満足を実現させるために、すべてのサービス提供をしがちですが、現実的には顧客の要望は無限で経営を圧迫するだけでしかないのですが、今回病院視察をさせて頂いて“一緒なんだな”と感心してしまいました。

二つ目は、『教育にかける費用の大きさ』です。

売上の1%と聞いてびっくりしました。1億で100万、10億で1000万と考えると途方もない費用だなと思いました。旅館ホテル業界ではせいぜい売上に対して0.1~0.2%がやっとで、教育費は0円なんて会社が多数を占めています。もちろん病院という専門性の高い業務を行っているという事はあると思いますが、あればあるほど自社内で教育を行う場合が多いと思います。そこを外部に積極的に“知識”を得に行く方針はただただ素晴らしいと思いました。今後この『1%』という数字は、私の旅館ホテルを支援するうえでの目標としていきたいと思っています。

三つ目は、近森先生が再三おっしゃっていた『繋ぎ』です。

病院業界を知らない私からすると、逆にそんなにつながっていなかったんだと驚きました。よくある病院のたらい回しではなく、ステップダウンするという発想はこれまでかかってきた病院には無かった感覚で、そこが近森病院が勝っている理由と感じました。