いい病院についての紹介

○私たちが考える「いい病院」とは何か?

私たちの母体である「いい会社」研究会では、「いい会社」の定義として、『従業員とその家族の幸せ』をめざす経営モデルを基に行う付加価値経営と定義し、「いい病院」、「いい福祉施設」
にも広く適用し、『医療者・職員とその家族の幸せを実現する組織がよい』とする考え方を基に調査・研究、更に実践することまで目標にしています。

私たちは、病院や福祉施設に関わる人に視点を持ち、それら個々の【ステークホルダー】の立脚点で検討していくことを定義しました。従来の考え方では最重要とされてきた患者とその家族のみという考え方ではなく、医療提供環境とその医療サービスの質を保つためには、「医療者」自身とその支援を行う家族に着目しています。

 

○私たちが「いい病院」を考えるのは、なぜか?

私たちは「いい会社」研究会を母体に、「いい病院」とは何かを考える研究分科会を結成し、その活動を始めました。医療を受ける権利は、日本では恵まれている一方、医療を取り巻く 環境が多岐にわたり、医療分野の受け持ちが肥大化し、機能不全や不平等を起こし、優れた日本の医療提供環境が崩壊しかねないと昨今、問題視されてします。

 

○私たちの活動と未来

私たちの活動によって、広く普及している良い病院の定義と異なり、医療・福祉に関わるものたちの態度・関わり方の努力と行動によって、「いい病院」が日本全国に拡がることを期待しています。

 

 

聖隷三方原病院紹介

聖隷三方原病院

静岡県浜松市の北西部に位置しており、病床数は県下最大の934床です。常駐ヘリポ-トを配備した救命救急センタ-が活躍する急性期医療のほか、170床の重症心身障害児施設、104床の精神科、27床のホスピス、さらに20床の結核病棟など幅広い医療を提供しています。

 

 

沿革

はじめに愛があった

聖隷福祉事業団の原点は、1930(昭和5)年、静岡県浜松市でクリスチャンの青年たちが、当時、死に至る不治の病として恐れられた結核をわずらっ

た患者を無償の愛で受け入れ、看護したことが始まりでした。「隣人愛」は基本理念です。

 

 

■病院の機能

日本医療機能評価機構認定病院、付加機能評価、緩和ケア機能・リハビリテーション機能・救急医療機能

 

 

■看護部の紹介

当院は、地域に必要な医療を先駆的に手がけてきました。日本で最初のホスピス開設(1981年)、「患者の権利宣言」を掲げインフォームド・コンセントを推進(1992年)、ドクターヘリ事業と救命救急センターの指定(2001年)、助産師外来(2007年)・院内助産所開設(2009年)、聖隷おおぞら療育センター増床(2012年)、ほか摂食嚥下リハビリテーション、緩和ケアチー
ムなど、全国の病院のモデルになるような医療・看護があります。また、急性期病院でありながら結核、精神科、ホスピス、重症心身障害児施設を有し、特徴的な医療を実践しています。それゆえ、それぞれの職員が専門性を持っています。

 

 

■看護体制

PNSで二人三脚
一般入院基本料は7:1を取得し、看護提供方式はチームナーシング+PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)。アナースと一緒に看護にあたります。チーム医療のもと他職種カンファレンスを実践しています。勤務は3交代・2交代(職場により導入)があります。

 

 

 

特徴

 

・CE室

“私たちは高度な専門知識・技術のもと、患者が安全で安心できる医療を提供する”という運営方針を掲げ、職員が「働きやすい・働きたくなる」職場環境を目指しています。CE室は、2011年12月まで同時期に1名の育児休暇取得の経験しかありませんでしたが、3名が育児休暇取得中の現在もCE室の役割を果たしています。ちなみに育児休暇後の復帰率は、予定も含め100%。

 

・各係が応援できる体制

基本的には、急な休みや急な業務が入った時の緊急対応ができる体制です。実際には長期休暇になってしまう産休・育児休暇に対する『子育て支援体制』として大いに機能していると実感しています。

 

・公平な人材評価

新人から役職者、男性・女性すべてのスタッフを対象とした“キャリアパス・「働きたくなる職場」とは、スタッフ全員が高いモチベ-ションを持ち業務が行える職場だと考えています。高いモチベ-ションの形成は、「承認」・「達成」・「仕事への責任」・「昇進」などの「自己の成長や自己実現を望む欲求」だと言われています。
そこで我々は、それを実行する方法として『キャリアパス・キャリアラダ-の運用』に取り組んでいます。

キャリアラダ-”を運用し人材育成および評価を行っています。1つの側面から言えることは、男女関係無くまた長期休暇が原因でキャリアアップができないということが無く、スタッフのモチベ-ションを維持し向上心のある CE 室の運用ができています。CE室の女性のインタビュ-でも「男女の区別無く評価されることで、モチベ-ションがあがる」という声がありました。

 

※病院紹介文は日本臨床工学技士会 男女共同参画サイトからの引用

 

平成26年5月23日に社会福祉法人 聖隷福祉事業団 総合病院 聖隷三方原病院様に見学させていただきました。

病院に到着して初めに気づくのは来院者の車の誘導から車いすや補助具への移し替えをされているスタッフのサービスです。このような方がいらっしゃると体の不自由な患者が非常に助かっている場面を見る事が出来ました。

次は傘置場で晴れであるのにかかわらず、傘が一つさしてありました。ただし、スタッフの方がそれを気にして移動させていました。心配りがされていていました。

訪問時の初め、ご説明を頂くまで時間が有ったため昼食を頂きました。メニューを注文してからトイレに行くために食堂の外へ出て帰ってきたときに食堂の従業員さんに「おかえりなさいませ。」と声をかけてもらいました。この一言でお客様の一人一人をしっかりと認識して接しておられることが分かりました。委託業者なのかもしれませんが食堂の従業員さんも素晴らしい対応です。患者やその家族にとっては食堂も病院の一つですからとても大切に思います。食事もとてもおいしかったです。

書店を見ようと思い、構内図を見ながら歩いたのですが、迷子になってしまいました。通りかかった職員の方に尋ね、参考に移動し、更に自分の足で探すことで見つけました。また、患者と思われる高齢女性二人の会話を聞き取りましたが「あちらかな?こちらかな?」と受診される場所を探しておられる様子でした。大きな病院のため仕方ない面もあるかもしれませんが、この点には少し工夫が必要かと思われます。

 

ドクターヘリを見学しました。ヘリコプターを近距離で見たことが無かったのでとても興味深く、患者を搬送するために特化した構造が面白かったです。人口が減少し、ひょっとすると社会保険の患者の自己負担率が上がる可能性のある今後、病院への受診率が下がり、地方の病院の経営が難しくなり病院自体が少なくなってゆく可能性があります。その時、この様な遠距離を患者の負担無く移動させる機能は今後、非常に重要になってくるのかもしれません。お話を聞いたところドクターヘリを飛ばせば飛ばすほど赤字になるそうです。この取り組みのために、国が正式にドクターヘリの制度導入を決める前のデーター取得をこちらの病院で蓄積されたそうで、県や市からの補助があるそうですが、今後もその重要性を訴え続けて維持する努力の必要であるように思いました。

 

病院内を歩いて移動しました。大きな病院とあってかなりの距離があります。その間、平たんな道ではありません、傾斜を登ったり下がったりで途中、足が躓いてしまいました。何故このような構造になっているのか気になったのですが、建物の建築時期が異なり、更に建築基準があるためにこのようになったことを知りました。更には設置設備の関係もあるようです。

病院内は適度に明るく、窓ガラスの汚れも無く、当然ながらゴミやほこりも少なく清潔で、行き届いた環境でした。手すりのある場所には基本的に邪魔になるものは置いてありませんし(1か所だけゴミ入れが置いてあったところがありましたが、必要なのでしょう。)、病院のみならず、良い企業を見学したときに感じる、必要なものだけがそこにあり、不必要なものが全く見えない理想的な環境でした。

すれ違う看護師や職員の皆様の明るい笑顔とあいさつも、心が癒されるようでとても素敵でした。

一つ、非常ドアの横に多くの段ボールが置いてあった箇所があり、そこは通れるとはいえ地震等の場合は通れなくなる可能性があり気になりました。

患者に明るい病室で過ごしていただこうとする姿勢や、不安を抱えている人々がお互いの気持ちを共有でき、孤独感を無くせるようにと取り組まれている「じゃがいもの会」や、心のケアとして相談所を用意したり、家族団らんのための部屋を用意しており、更には部屋代を頂かない場所もあると聞き、経営が病院の枠を超えて世のため人のためになるように行われている点に非常に感心しました。

説明していただいた方の言葉として「良い事だったらやってみよう。地域から望まれていることをする。その姿勢をブレいないようにする。」言葉にチャレンジ精神とサービス・ホスピタリティの精神を感じました。

また、新しい取り組みや事業を行う際に予算ベースで採算の合うように、1事業で合わない場合は全体のバランスを見て採算の合うように行うとのことでした。問題点として事後の成果と採算とが事前のシュミレーションに合ったかどうかの綿密な確認が出来ていないと仰っていました。素晴らしい取り組みをされているので、その想いを実現できるように事前の目的と期待を明らかにし、明確に設定し、事後に評価できるようにしておくことで、更にその後の計画が正確にできるようになるのではないでしょうか。

頂いた資料を読ませていただきました、70周年記念本の関係者のお祝いの言葉とされる中にも、関係者の中には今後の病院の未来を思っての厳しいお言葉を記されているかたがいらっしゃって、良い人々に恵まれているとうかがい知ること出来ました。また、この様に本にすることで、関係者が手に取り理念や歴史を振り返る事が出来、勤めている病院に誇りを持てる効果もあるように思いました。