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「生きづらさをたくさん抱えて」~蜘蛛恐怖症から強迫性障害~

現在、就労支援施設に通う26歳の発達障害の女性Nさん。

彼女は21~23歳までの2年半、私が自立訓練のためにやっていたうどん屋に来ていた方です。関わった結果、何とか就労支援施設に通い、軽作業ができるようになりました。

彼女は、中学校時代は不登校で、保健室登校でした。高校は私立を何とか卒業できましたが、その後は、家にひきこもっていました。そこから私のところに訓練に来るようになりました。

先日、強迫性障害になってしまったと2年ぶりに連絡がありました。子どもの時からある蜘蛛恐怖症と今は出かけるときや寝る前の火の心配からの確認もあるとのことでした。

蜘蛛恐怖症は、幼児期に大きな蜘蛛の巣に絡まってしまったことから蜘蛛に恐怖を感じるようになりました。道を歩くときも常に蜘蛛の巣がないか、最新の注意を払っています。

私といるときも、数メートル先にいる蜘蛛を見つけただけで「ぎゃーっ」と大騒ぎになりました。私が気づかないような小さな蜘蛛もすぐに見つけます。それで少しでも慣れるようにと当時「暴露療法」をやってみました。

※暴露療法とは、不安障害に用いられる行動療法の技法である。この技法では、不安や苦痛を克服するため、患者が恐怖を抱いている物や状況に対して、危険を伴うことなく直面させることとなる。
全般性不安障害、社会不安障害、強迫性障害、PTSD、特定の恐怖症などの障害の治療について、さまざまな研究においてその有効性が裏付けられている。

私は蜘蛛を見つけると「ちょっと来て」と呼んで、わざと蜘蛛を見せるのです。3ミリほどの小さな蜘蛛でもこの世の終わりのような声を出して逃げます。

何度もそれを繰り返しました。家が近いので、泣いて家に帰ってしまったこともあります。

お母さんがびっくりして、「娘に何ということをしてくれるのだ」と店に抗議に来たことも(笑)

そんなことを2年間繰り返しましたら、怖いけれど見ることは何とか大丈夫になりました。

その後、車の免許を取り、障害者施設に通うようになりました。その車に乗ったら蜘蛛がいたそうで、そこから怖くて車に乗れなくなったようです。精神科にもかかり安定剤も飲んでいるため、薬の副作用で車の運転は危ないとお母さんに施設まで朝送ってもらっていると連絡がありました。電車でひとりでも行けるところですが、母親に頼っています。

お店に来ていたときは、見ることは大丈夫になったことを話し、恐怖を乗り越えたことを思い出してもらいました。それでもかたくなに「やつ(蜘蛛)だけは、絶対に無理。恐怖症レベルなので見るだけでもダメなんです。この世で一番怖い存在なんです。」と返信がきました。

それでも過去には見ることはできるようになったことを繰り返して話しをすると、「この前殺虫剤で、自分で蜘蛛を退治した」と言うのです。「すごいね!自分で退治できたんだね。」とできたことを認めて、「見るだけなら大丈夫だよね。」とすべてダメという考え方から、そうではないことを認識できるように話しをしました。

Nさんは、暗闇恐怖症もあります。子ども時代に悪さをすると土蔵に閉じ込められたそうです。

土蔵は明かりが入らいないので、真っ暗です。どんなに泣いて出してと言っても、しばらくは出してもらえなかったそうです。その経験から暗闇恐怖があり、今も夜はひとりで出かけられません。しかも一晩中、電気をつけっぱなしで寝ています。夜出かけるときは、お母さんについてもらい、手をつないでいないと怖いそうです。

さらに、汚いものに触れません。布巾は大丈夫ですが、雑巾は汚いと触れません。土も素手では触れないなど、たくさんの恐怖があります。

当時話しを聞いていてわかったことは、母親との共依存があることでした。摂食障害、リストカットもありました。手首には何本も傷がついていて、ブレスレットで隠していました。

摂食障害や恐怖症はじめ、様々な症状を出して、母親が常に守ってくれるようにしています。

母親へのカウンセリングも継続してやりました。依存をさせないように、少しずつ手を放すことを提案しましたが、母親の今までと違う対応を感じるとNさんはリビングのテーブルに、母親に見えるように、「死にたい」と紙に書いて置いておくのです。母親をびっくりさせ、自分から手を離さないようにコントロールしていました。母親には「そのように書いても死なないから大丈夫」と話しをしても、「もし本当に死んでしまったら困る」とこちらの言うことを聞いてくれませんでした。強烈な共依存です。

ただ、今は施設の工賃が安くてほしいものが買えないから、一般就労したいという気持ちになっていることと、絵を描くことが好きなので、できればプロのイラストレーターになりたいという希望があります。また、幸せになりたいから、人との繋がりがもっとほしいので、私に誰か紹介してとも言っており、前向きな気持ちになっています。いろいろなことがあり、ゆっくりですが、彼女らしく成長していることがとてもうれしいです。

できないことに目を向けるのではなく、できること、やりたいことを伸ばしていければ、苦手の克服も可能ではと感じています。

時間はかかるかもしれませんが、気長に信じて待つことが大切ですね。

                                     人づくりチーム

北澤裕美子

 

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